V6井ノ原快彦氏主演の妄想非恋愛小説を取り扱っております。
No.230
2008/06/26 (Thu) 22:19:15
短編更新です。
さぁ、佳境となってまいりましたね、ネクジェネ没ネタバトル。
ここに来て、リーダーが激しく追い上げております。
来週あたりが決着でしょうか。
個人的には、イノの新曲(笑)が聞きたいですね。
出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 三宅 健(ほんの少し)
さぁ、佳境となってまいりましたね、ネクジェネ没ネタバトル。
ここに来て、リーダーが激しく追い上げております。
来週あたりが決着でしょうか。
個人的には、イノの新曲(笑)が聞きたいですね。
出演 : 井ノ原 快彦 ・ 坂本 昌行 ・ 三宅 健(ほんの少し)
秋色真理夜話
殺意を覚えた。とは彼のエゴ。
何故彼がそんな場所から、そんな物騒且つはた迷惑な手段で乗り込んできたのかは知る由もない。そもそも、そこにどうやって侵入を果たしたのかさえ謎だ。
ただ、彼の言うことは尤もだった。降って湧いたような偶発的ないくつかの災難に見舞われた結果、ここ何日かは笑うことを億劫だと位置づけている。取るに足らない些細なことかもしれない。いい年をして気にかけることではないのかもしれない。それでも、それでも事実、恐くてたまらなかったのだ。それらの出来事が何か混沌とした未来を暗示しているような不安に駆り立てられて、無性に恐くなった。
近距離から中距離、そして長距離へ。彼らは確実に現在地から離れていく。最初から分かっていたことだというのに、この空虚な気持ちはどう説明すべきか。誰も説明などしてはくれないし、自分で無難な理由を付加しようと試みれば、被害妄想的な陰鬱とした思考の渦が轟音を響かせて瞬く間に広がる。
(失いたくない。ただそれだけの願いなんだ。)
感情を思い知れば比例して何もかもが風にかき消される砂の城のように、姿を崩していく。守れるものなどない。笑顔という酷く曖昧な武装を施したところで、無意味だ。
眩しいほどに光を放つ壮大な未来。イコール彼をじっと観察する。いくつか年上で、数年前までは守ってもらっていた存在であったはずだ。「よぉ。」と笑顔を添えて発せられた声も、夜風に揺れるすっかり伸びた前髪も、存在すべてが自分の感覚としては枠に収まる程度だったはずなのに、目の前にいる一人の成人男性の姿に、薄くミルク色がかったフィルターがかかっているのは現実。
「殺意とか覚えたんだけど。」
言葉の意味を理解することは叶わないまま、彼は続ける。
「なんで笑えない?俺らのこと、もう信用できないか?終わりだと思うのか?」
終焉の幕がゆっくりと降りてきたのだと、そう素直に伝えるべきかを答えあぐねる。明らかに心の余裕を残した彼の言葉が刃の如く研ぎ澄まされ、身体中のあらゆる急所に狙いを定めていた。
「なぁ、現実から逃げても井ノ原はこの世界から消えることなんてできないんだぞ。」
ベランダに侵入し、置いてあったリクライニングチェアで窓ガラスを叩き割って、彼は満面の笑顔を伴いつつやって来た。ここ数週間で察知した異変の正体を、己の目で見極めるために。そして、
「ここで見ててやるから、笑ってみろよ。」
第一声は勝気に口角を上げて容赦なく突き刺すような、ストレートな言葉だった。
記憶というログの中から引き出せる限りの情報の中で彼は、いつも遥か上空から見下ろしている役回り。決して見下しているわけではなく、実際に存在する場所がそこであるだけなのだ。比喩でも揶揄でもない、ただの表現。彼は上、さまざまな判断を下しても、彼は上。己から発する威力の歴然たる差の話。支えなくしてまっすぐに立ち、憤然と前進を続ける彼は上にいなければならない。後に続く者たちを導くのだ。飾った表現をするならば、標とでも言うのか。迷わぬように照らす光。上から、5つの生態系をまんべんなく見渡しては、軌道修正を繰り返す、さながら夜空に変わらず在る北極星のように。
目に留まることもなく抜け落ちる小さな棘にも似た他愛のないそれが、消す術のない大きな傷になるなんて情けない。悪意など皆無の、冗談だったのに。
「V6は解散したんでしょ?で、ソロデビューなんだよね?」
司会者の言葉は、充分に理解していた。笑いを取ることはバラエティ番組に必須のスキルなのだから。
「解散してませんから!やめてくださいよー。」
このときに示したやっとの答えが、最後の笑顔だった気がする。
割れたガラスの破片を綺麗だと形容したら、彼はどんな表情を見せるだろう。
唯一の永遠だと信じて疑わなかった。子供じみた理想論。ヒビが見えても見えないふりをしたり、希薄になってしまったつながりを心の底から全否定したり、あらゆる悪足掻きと呼ばれるものには挑んだ。結果、そんなものは何の意味も成さないと知っただけ。嘘でも笑うという行為さえもやめてしまったのは、現実を直視して大人の事情を十二分に考慮した上でのこと。彼がどんな強硬手段に出ようと、たくさんの望む言葉を紡ごうと、言えることはたったひとつ。
「もう、とっくに手遅れだから。」
それだけだ。
独特の浮遊感を操りながら見極めたポイントで笑顔になれば、偽装として成功である。その類の偽装など誰にも当然のごとき防衛本能で、直視できないものでもない。日付どころか、最近なのか昔なのかも思い出せないおぼろげなアレ。気付かなければ幸せなままでいられた、真実。数字として表現すれば片手で足りるわずかなもの。ただ、単純なありふれた言葉で表現するならば、それこそが『核』だった。消えてはいけない絶対。破壊したのはとても近しい人間。
「ねぇ井ノ原くん、もう番組は終わったんだよ。」
標準よりも高く響く声は悲痛な色さえ滲ませ、けれど躊躇うことなく真実のみを的確に伝えた。実年齢よりも遥かに若い印象を与えているはずの容姿が、この時ばかりは悲しいほどに年を幾重にも経た大人に見えた。
戦場に突如降り立った破壊者のように、ベランダからやって来た彼は敵か味方か。ひとつだけ断定できることは、吐き出した言葉が凶器にも等しいということ。幕を引く役目を担って現れたのならば、彼ほど相応しい人間もいない。それほどに強く鋭い視線と、オブラートすらも持ち得ない本音。
「笑えよ。まだ『V6』でいる気なら、笑え。」
虚構にしがみつくのは疲れる行為で、実態さえ曖昧な集団を守りたいという願いは痛いほどに伝わったとして、垣間見える隙間は隠せるほど些少ではなくなっている。
「笑えないよ。だってもうすぐ、終わるでしょ?」
喪うのではない。喪ったのだ。
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